医学部医学科4年次生の椿さんが日本細菌学会関東支部総会で、昨年に続き「学生優秀発表賞」を受賞しました

医学部医学科4年次生の椿翔吾さんと3年次生の梨本尚さんが、10月29日に日本大学松戸歯学部で開催された第106回日本細菌学会関東支部総会で研究成果を口頭発表。椿さんは「菌体外膜小胞により細胞内に送達されたsmall RNAによるマクロファージの機能改変」をテーマにプレゼンテーションし、昨年度に続き、「学生優秀発表賞」を受賞しました。

椿さんと梨本さんは本学科基礎医学系生体防御学領域の津川仁講師(総合医学研究所)の研究室で、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に関する研究に取り組んでいます。肺炎桿菌はヒトの腸管内に共生する腸内細菌の一種ですが、免疫力が低下した患者さんや高齢者に肺炎や肝膿瘍を引き起こします。院内感染の原因菌として問題視され、近年では本菌の薬剤耐性化が世界規模で拡散しており、本菌感染症の予防法の確立が急務とされています。しかし、腸内細菌でもある肺炎桿菌が肺や肝臓に感染巣をつくるメカニズムさえも十分に明らかにされていないのが実情です。

椿さんは昨年までに、遺伝子工学的手法を利用して肺炎桿菌の菌体成分であるsmall RNA(小分子RNA)が、同菌が産生する菌体外膜小胞(EV)に内包されて宿主細胞内に送達されることを解明。さらに本研究では、small RNA がEVによって肺や肝臓に送達され、送達されたsmall RNAが免疫細胞の働きを抑制することを見出しました。津川講師は、「この成果は、肺炎桿菌が、EVによるsmall RNA送達を利用して消化管内から肺や肝臓への感染を樹立させる(感染巣を拡大させる)ことを示唆しています。今回の受賞は、EVを腸内で捉えて排出したり、small RNAの送達を阻害したりといった、EVを標的とした肺炎桿菌感染症(肺炎や肝膿瘍)の予防法開発につながる成果であると評価された結果だと思います」と説明します。

椿さんは、「これまでは研究の多くを試験管内で行ってきましたが、これからsmall RNAによる免疫細胞への作用を、生体内モデルを用いて確認していくつもりです。この研究が感染症の予防法や治療法の開発へと発展し、将来、臨床医としてその診療に携われるようになれば、こんなにうれしいことはありません。引き続き勉学や臨床実習に注力するとともに、研究も継続していきます」と話します。津川講師は、「学部生時代からトップレベルの基礎研究の世界を知り、研究の重要性と面白さを学ぶと同時に、柔軟性のある科学的で論理的な思考を身に付けるための経験を積むことも大切です。椿さんと梨本さんには研究を続け、ぜひ“厚みのある医師”になってほしい」と期待を語っています。