大学院工学研究科の雨澤さんの論文が国際ジャーナル『Coatings』に掲載されました

大学院工学研究科2年次生の雨澤拓也さん(指導教員=高尻雅之教授?工学部応用化学科)がまとめた論文「カチオン界面活性剤ドーピングとフッ素ポリマーコーティングによる柔軟な熱電発電機用の安定したN型単層カーボンナノチューブ/メッシュシート」が、国際ジャーナル『Coatings』に6月26日付けで掲載されました。

高尻教授の研究室では、熱を電気に変換する熱電発電材料の研究を展開しています。今回掲載された論文は、優れた耐久性と柔軟性を持った熱電材料「単層カーボンナノチューブ」(SWCNT)を塗布したメッシュシートに関するもの。同研究科を2022年度に修了した三浦克真さんの研究によって、プラスの電気を発生させる「P型SWCNT/メッシュシート」の作製方法は確立されていましたが、マイナスの電気を生む「N型SWCNT/メッシュシート」を作製して安定化させる方法は解明されていませんでした。

雨澤さんは、P型SWCNT/メッシュシートをカチオン界面活性剤に浸して作製したN型SWCNT/メッシュシートを乾燥させた後、1時間の熱処理を施してフッ素ポリマースプレーをかけて酸化を防ぎ、N型として15週間安定化させることに成功しました。さらに、P型とN型のSWCNT/メッシュシートをヒーターに乗せ、ヒーター接触部分と非接触部分の温度差から発生した電気を計測。温度差が71Kの時に15mVの電圧、100nWの最大電力が出力されたことから、熱電発電機として機能したことを実証しました。

指導に当たる高尻教授は、「N型の界面活性剤は分散性が低いため、物体を浸してもN型として定着しづらく、すぐにP型に戻ってしまう特性があります。15週間も安定させる方法を見つけたのは大きな成果です。より長い期間で状態を保てるように研究を重ねてほしい」と語り、雨澤さんは、「メッシュシートに関する研究は学部生の時から取り組み、三浦さんの研究も手伝っていたのでようやく実績を残せてうれしく感じています。さらに発電効率を向上させられるように検証を続けたい」と語りました。