建築学科の学生が卒業研究で取り組んだ省エネ照明制御が1号館に導入されました

卒業生3名の研究成果を生かし、天井に円筒状の調光センサーが設置されました

工学部(建築都市学部)建築学科を2022年度に卒業した下村あやめさん(三建設備工業株式会社)、鈴木豪起さん(三井建設工業株式会社)、秦海瑶さん(坪井工業株式会社)が卒業研究として取り組んだ省エネ照明制御がこのほど、湘南キャンパス1号館に導入されました。3名は山川智教授(建築都市学部建築学科)の研究室で本キャンパスのゼロカーボン化に向けた研究を進め、卒業前の23年2月に本学の施設設備担当に改善策を提案。今年3月に南側の20教室にLEDと照明の明るさを調整する調光センサーが導入され、4月から運用が始まり、約77%の省エネ効果を確認しています。

3名は本キャンパスのシンボルである1号館を研究対象に決め、建物のエネルギー収支0を目指す「ZEB」(Zero Energy Building)化に向けたアイデアを出し合って議論や調査を重ねました。エネルギー消費状況を分析した結果、空調用冷温水を供給する熱源機(吸収式冷温水発生機)と照明が約半分を占めていると分かり、熱源機については3名が提案した改善策が22年10月からすでに採用されています。照明については、蛍光灯からLEDに変更することで消費電力を約44%削減できると算出。さらに、調光センサーを導入することで、窓からの日の光の強さによって照明の明るさを調整し、机上面の明るさ(照度500lx)をキープしつつ消費電力量の削減を図る方法を検討しました。気象データをもとに、主に授業で使用している午前9時から午後5時まで照明の明るさを調整した場合の省エネ効果を計算し、南側の教室では窓側から1列目の照明は83%、2列目は58%、廊下側は8%の消灯が可能となり、全館に導入した場合、LED化と合わせて1年間で約70%削減できると提案しました。

秦さんは、「自分たちの研究成果が実際に採用されたと聞き、本当に驚きました。図面やデータをもとに計算し、実際に教室を見に行って照明器具を確認するなど、研究を形にしていく過程はとても楽しかった」と振り返ります。下村さんは、「各自50個ずつアイデアを出し、その中から実現可能性を考え、パソコンの計算ソフトの使い方から勉強して研究を進めてきました。大変なことも多かったけれど、社会人になってから仕事で実際の現場を見ると、自分たちの研究してきたことが社会で役に立っていると実感しています」とコメント。鈴木さんは、「1号館についてさまざまな検討を積み重ねた結果、設備や外壁等の更新の機を捉えて計画的に進めることで、2050年までにZEBを実現できるという結論を導くことができました。ゼロ?カーボンキャンパス実現に向けて、研究成果が採用されたらうれしい」と話しました。指導した山川教授は、「学生たちには“研究だけで終わらず、提案して実現を目指そう”と話しています。3名は自分たちで考え、さまざまな知識や技術を組み合わせて形にしてくれました」と評価します。学長室施設設備担当の石丸由理さんは、「具体的な数値に裏付けされた現実的でかつ実現可能な提案だったので、短い期間で形にすることができました。今後も先生方と連携し、よりよいキャンパスにしていきたい」と話しています。