大学院生の宍倉享佑さんが国際会議でポスター賞を受賞しました

大学院工学研究科応用理化学専攻2年次生の宍倉享佑さん(指導教員=工学部応用化学科?源馬龍太准教授)が、5月26日から31日までフランス?サンマロで開催された「18TH INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON METAL-HYDROGEN SYSTEMS」でポスター賞を受賞しました。この国際会議は1980年代から金属と水素の反応に関する基礎研究について討議する場として2年に1度開催されており、現在では水素エネルギーへの世界的な関心の高まりを受け、水素-固体全般に関わる研究へとフィールドが広がり、世界各国の研究者が参加しています。ポスター賞は、アメリカやドイツ、フランスなど世界各国から参加した若手研究者による202件の発表の中から12件が選ばれました。

源馬准教授の研究室では主に、二酸化炭素のメタン化に関する研究を行っています。大気中の二酸化炭素を取り込み、水の電気分解により生成した水素からメタンをつくる取り組みは、地球温暖化を緩和する方法の一つとしても注目されています。従来、この反応は、高温条件を必要としていましたが、源馬研究室では、二酸化炭素と水素の混合ガスの中で、水素吸蔵合金等の金属をボールミリングにより機械的に粉砕処理することで、外部から加熱をしなくとも二酸化炭素をメタン化できることを報告してきました。

宍倉さんの発表テーマは「Investigation on gaseous hydrogen formation by ball milling of Al hydroxide(水酸化アルミニウムのボールミリングによる水素生成の調査)」で、このボールミリングの応用をさらに進めて、水酸化物からの水素生成の可能性について試行錯誤を重ねた成果をまとめたものです。ボールミリングとは、金属あるいはセラミック容器の中に同素材のボールを入れ、そこに試料を加えて回転もしくは振動を加えることで、試料の微粉末化や合成などを行う方法です。宍倉さんは当初、試料として水酸化カルシウムを用いて水素の抽出を試みましたがうまくいかなかったため、脱水反応の温度が低い水酸化アルミニウムに着目したところ、水素生成に成功しました。また、大気雰囲気の下でボールミリングすることで、大気中の二酸化炭素と、生成した水素が反応してメタンが生成することも明らかにしました。

宍倉さんは、「フランスに着いたときから体調を崩して寝込んでしまい、不安もある中での発表になりましたが、源馬先生や一緒に研究に取り組んできた大学院生仲間に励まされて発表に臨みました。ポスター賞受賞は自分一人の力ではないので、周りの全ての人たちに感謝したい」と語ります。源馬准教授は、「水酸化アルミニウムは、アルミニウム製造や表面処理過程で副次的に産業廃棄物として出てくるもので、リサイクルが求められています。廃棄物をボールミリングの手法を用いて有効利用する意義は大きく、今回の受賞はその点が評価されたのかもしれません。ただ、大事なのは面白がって研究に取り組むことです。これからも学生や大学院生には好奇心を大切にしてもらいたい」と話しています。