卒業生の根本さんがコンクリートのこわばりに関する研究で優秀博士論文賞「山田一宇賞(土木分野)」を受賞しました

「2020年度コンクリート工学会賞技術賞」の賞牌を持つ伊達教授(左)と山田一宇賞の賞状を手にする根本さん。本研究テーマでの2つ目の受賞となりました

2022年度に大学院総合理工学研究科で博士(工学)の学位(論文博士)を取得した根本浩史さん(清水建設株式会社)がこのほど、公益財団法人前田記念工学振興財団の澳门特区赌场_澳门英皇娱乐_彩客网官网推荐6年度優秀博士論文賞「山田一宇賞(土木分野)」を受賞。5月31日に東京會舘で表彰式が執り行われました。同賞は、工学のうち土木及び建築に関する学術研究において著しい成果をあげた研究者を顕彰するために設けられたもので、独創性?新規性があり、今後の学術?技術の振興に寄与すると認められる優秀な博士論文に対して贈られるものです。

根本さんの論文テーマは「コンクリートのこわばりに関する研究 ならびに こわばり低減剤の開発」です。セメントと水を混ぜ、型枠内に流し込んで硬化するまでの状態を指す「フレッシュコンクリート」は、型枠に合わせて自在に成型できる一方、一定時間を過ぎて硬化した後に型枠通りに成型できていないと、補修や作り直しなどの大きな損失が生まれてしまいます。根本さんは清水建設の技術者として長年、コンクリートの施工に携わる中で、流動性が急激に損なわれて動きづらくなる「こわばり」が主要因となるコンクリート性状変化や初期欠陥の発生を目の当たりにし、これを防止するためにこわばり制御の必要性があると考えました。本学建築都市学部(工学部=当時)土木工学科の伊達重之教授の下で、研究室の学生、コンクリート用化学混和剤の製造などを手掛ける株式会社フローリックと共同で研究に着手。今回の受賞は、建設現場などで呼ばれてきた「こわばり」という現象を学術的に定義づけるとともに、新たに開発した「こわばり低減剤」を実用化した点が評価されました。

「過去研究の調査と実験等を行い、こわばりの発生条件と施工に与える影響を分析するとともに、こわばり具合を定量的に評価する方法を開発しました。また、こわばりを低減するために有効な方法を理論と実験の両面からのアプローチで開発し、『こわばり低減剤』の実用化にこぎつけました。こわばり低減剤は、低コストなうえに、洗濯機に洗剤を入れるように、コンクリートに粉末状の低減剤を入れて2分ほどかき混ぜるだけでこわばりにくくなるという扱いさすさもあり、すでに100件以上の現場で使用されています。企業と大学がうまくタッグを組み、形にすることができました」とコメント。伊達教授は、「2020年度のコンクリート工学会賞技術賞に続いて研究の成果が評価され、大変うれしく感じています。学生にとっても実際の企業で働く根本さんとともに研究に取り組めたことは大きな経験になりました」と話しています。