海洋学部海洋地球科学科の原田講師が清水テルサ防災セミナーで講演しました

海洋学部海洋地球科学科の原田靖講師が2月24日に、静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサで開かれた「防災セミナー」で講演しました。固体地球物理学、プレート運動論が専門で、グローバルプレート運動論や一億年スケールの地球の自転軸の運動の解析、GPSによる地殻変動データ解析の研究に取り組む原田講師は、「南海トラフ巨大地震のひっ迫度と静岡市周辺の津波シミュレーション」をテーマに講演。市民ら約100名が聴講しました。

はじめに、2007年と2020年に政府が発表した今後30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率分布や、太平洋プレートとフィリピン海プレートの影響による2011年の東日本大震災前の日本列島周辺の地殻変動の様子と地理的特徴、海溝の存在による地震発生のメカニズムや火山噴火の関係性などについて解説。「日本列島は海溝の存在によって造られており、地震や巨大津波、火山活動、活発な地殻変動は、日本人が運命的に付き合っていかなくてはならない地学現象です。そのため、日本人は他国に住む人たちよりも危機管理の意識を持つ必要があり、小中学校などにおける教育からその意識を上げてくべきだと考えています」と提唱しました。さらに南海トラフを震源とした巨大地震で想定される震源断層域を示しながら、2011年に発生した東日本大震災との違いについて「南海トラフ巨大地震が発生した場合、東日本大震災よりも震源までの距離が短く、津波の到達時間が早いところで2分程度と短くなることが見込まれます。また、揺れの強さも大きくなると考えられます」と語り、研究室で作成した三保半島の津波浸水をシミュレーションした結果の一例を示し、「巨大地震が起きた際には一刻も早く高い建物に逃げ込まなくてはなりません」と警鐘を鳴らしました。

最後に再び防災教育の重要性について触れた原田講師は、「日本という国が本来的に大災害の発生しやすい場所にあるという認識の欠如や、自然現象の発生頻度と規模に関する科学的理解不足、経験がないものへの対応ができない想像力不足と思考停止などは非常に問題です。これらの解決には防災意識の向上を図る教育が大変重要です。防災に関する授業を必修科目にするなど知識?意識教育の徹底化と賃貸家屋における家具の固定などに関する法改正、津波避難所を国が充実させるといった対策が望まれます」と話しました。

終了後の質疑応答では、「1970年代から東海地震の発生が予想され、沿岸に観測機器が設置されるなどの動きがありましたが、現在はどのようになっているのでしょうか」「今年1月の能登地震と南海トラフ地震の発生メカニズムの違いは?」など多数の質問が寄せられたほか、静岡市清水区内における防災対策のあり方についてなど、熱心な意見交換が行われました。