「彫刻を触る☆体験ツアー2022」を開催しました

ティーチングクオリフィケーションセンターでは7月30日に、湘南校舎で「彫刻を触る☆体験ツアー2022」を秦野市と共同開催しました。このイベントは、本センターが開講する「博物館実習2」(松前記念館実習)の実践実習の一環として、「屋外彫刻の保存と活用」をテーマに、学内にあるブロンズの屋外彫刻に直に触れるメンテナンスの体験を通じて新たな芸術鑑賞法や保存の意義を知ってもらおうと2014年度から実施しているものです。午前と午後に分けて実施し、学芸員資格の取得を目指す学生と「神奈川県高校生インターンシップ」に登録する県内の高校生、はだの歴史博物館の博物館実習生、秦野市の市民ボランティア「彫刻愛し隊」のメンバーら約30名が参加。筑波大学人間総合科学学術院博士課程の羽室陽森氏による指導のもと、校舎内に設置されている北村西望作「松前重義胸像」と舟越保武作「山田守像」の2体のメンテナンスに取り組みました。

当日は、はじめに本センターの篠原聰准教授がイベントの趣旨と作業の流れを説明。「屋外彫刻のメンテナンス作業をするとともに作品に触るこのプログラムは、美術館の課題である“資料?作品の保存と活用”が同時にできる取り組みです。目が見えない人が美術作品を楽しむ方法として知られる“触る鑑賞は、目が見える私たちでも新たな発見がたくさん見つかると思います」と語りました。その後、参加者たちはブロンズ像の汚れや傷など状態を確認し、専用の洗剤を使って汚れを落とし、羽室氏から「ただ綺麗にすることだけが目的ではありません。ブラシで磨くときに像の凹凸や曲線を感じてみてください」というアドバイスを参考にメンテナンス作業に取り組みました。また、午前の部と午後の部の間には、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎氏が「無視覚流鑑賞の極意」と題して、視覚障害をかかえる人の生活や彫刻を触る鑑賞方法について解説。「見る鑑賞は距離が遠くても分かりますが、触る鑑賞はゼロ距離で質感や温度などを感じ、作品とつながることができます。目に見えるものが全てではないので、触りながら作品の背景やどういう思いや目的で作られたものなのか想像してみてください」と参加者に語りかけました。

秦野市文化スポ―ツ部文化振興課文化交流担当の林修也氏は、「この取り組みは座学だけでは得られない経験ができる貴重な機会だと思います。秦野市だけに限らず公共の野外彫刻はたくさんあるので、在学中だけでなく、社会に出てからも彫刻保存活動に協力してもらえたら」と学生への期待を語りました。学生からは、「同じ校舎内でも設置されている環境によって状態が大きく異なることが分かりました。学んできた知識だけでなく実際に作業したことで“触る鑑賞”の重要性を理解できました」「“メンテナンスの前と後では、ブロンズ像の表情が変わる”と篠原先生がおっしゃっていたのを初めは半信半疑で聞いていましたが、メンテナンス後は表情が優しく見えました」といった感想が聞かれました。