医学部医学科の後藤講師が心電図から心房中隔欠損症を検出するAIを開発しました

医学部医学科の後藤信一講師(総合診療学系総合内科学領域)と慶應義塾大学、獨協医科大学の研究者らが、心電図から心房中隔欠損症を検出する人工知能(AI)を開発。その成果をまとめた論文が8月17日に、医療ジャーナル『eClinical Medicine』オンライン版に掲載されました。

心房中隔欠損症は、心臓の左心室と右心室を隔てる壁に穴が開いている先天性疾患の一つです。ほとんどの人が気づかずに成人し、症状が出ても軽いため聴診や心電図といった検査では見逃されがちで、治療せずにいると心房細動や脳卒中、心不全などの重篤な合併症のリスクが高まることが知られています。正確に診断できる方法として心臓超音波検査(心エコー)がありますが、手間や時間、費用がかかり、症状のない多くの人への実施が難しいという課題がありました。そこで、短時間に大規模な集団検査が可能で、早期に正しく心房中隔欠損症が発見できる診断法の開発が求められていました。

後藤講師らは、心エコーと比べて約1分程度ときわめて短い時間で実施できる心電図に注目。慶應義塾大学病院、獨協医科大学埼玉医療センター、アメリカ?ハーバード大学ブリガムアンドウィメンズ病院の3施設から得られた心電図と心エコーのデータを深層学習させたAIにより、たった1枚の心電図から心房中隔欠損症を高精度に診断できるモデルを開発しました。その精度を検証した結果、年齢や性別、体格指数(BMI)、人種といった要因に影響されず一貫した性能を発揮するとともに、医師の心電図所見によるアプローチに比べて発見の感度が高く、治療が必要な患者の検出においてもきわめて優れた性能が有することを明らかにしました。

後藤講師は、「心電図は多くの人が病院やクリニックで受けられる手軽な検査です。開発した診断モデルは人間の目では判断できない心電図のわずかな変化を検出し、心房中隔欠損症を高精度に特定できるのが特長です。早期発見?早期治療につながると期待されており、現在は実用化に向けてベンチャー企業との共同研究も進めています。多くの人々に健康な未来をもたらせるよう、さらに努力を続けます」と意欲を語っています。

※『eClinical Medicine』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。  https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2023.102141